第12回地域再生大賞表彰結果発表
第12回地域再生大賞表彰結果発表

第12回地域再生大賞が
決まりました

「未来へつなぐ、みんなで」をテーマに審査を進めていた第12回地域再生大賞の各賞が決まった。人々が暮らす地域を守り、ひとりひとりの個性を生かす現場の取り組みは、新型コロナウイルス禍にひるむことなく、たくましく各地で展開している。
全国46の新聞、共同通信社の推薦、NHKの協力で集まった推薦団体の活動は例年にも増してすばらしく、4人の選考委員による視察、審査は簡単ではなかった。
選考に当たっては国連の持続可能な開発目標(SDGs)の要素も導入。厳正な審査の結果、選ばれた団体を紹介する。
副賞は大賞100万円。準大賞が各15万円。ブロック賞、各特別賞10万円。優秀賞の団体には記念盾を贈呈する。

【沼尾波子選考委員長講評】

【沼尾波子選考委員長講評】

自分、相手、社会を豊かに

「未来へつなぐ、みんなで」と題した今回、各地の優れた取り組みが寄せられた。パンデミックや大規模災害を契機に改めて人と人のつながりや自然環境を守り、次世代に豊かな地域を継承する力強い活動がみられた。
SDGsを掲げたこともあり、大手企業の取り組みや行政と地元企業や団体などが連携した大胆な活動も挙がるなど推薦団体・活動の幅が拡がった。いずれも地域や社会の課題に根差した丁寧な取り組みで、優劣つけられるものではなく、審査は難航を極めた。
大賞「河原部社」は、中高生が自分を知り、地域や社会とつながるきっかけを創出する拠点だ。支援する・されるという関係を超えた創造的プラットフォームの運営は、他地域のモデルとなる。
準大賞「こまちぷらす」は、地域で暮らす多様な人々のつながりを支える場と人材育成に取り組む。「石徹白洋品店」は地域の風土や文化に根差した暮らしの伝承と再生を、衣類から興した。
自分を軸に、他者とつながり、活動することで、自分も相手も社会も豊かになるという社会経済関係が、若い世代を中心に新しい形で創出されている。こうした活動が各地で広がりを見せていることに希望を感じた。

ぬまお・なみこ 東洋大教授。地方財政が専門で地域づくりを支える行財政システムを研究。千葉県出身。

他の選考委員は大桃美代子氏(タレント。新潟県中越地震での実家被災を契機に食育や農業、地域振興に取り組む。新潟食料農業大客員教授)、佐藤宏亮氏(芝浦工業大教授。建築の視点から各地のまちづくりに参加。愛知県出身)、藤波匠氏(日本総合研究所上席主任研究員。地域再生、人口問題などが専門。神奈川県出身)

地域再生大賞

河原部社

かわらべしゃ

(山梨県韮崎市)

大賞

若者の夢を応援する居場所

壁には「あなたは何に進化する?」の文字。着なくなった思い入れのある服を譲り受けてコーディネートを楽しんだり、卓球のラケットを作ったり…。イヌ科やネコ科に分かれる前の太古の生物「ミアキス」という名の活動拠点で、中高生が思い思いの時間を過ごし、多彩なイベントが繰り広げられる。 市の委託を受け起業家やデザイナー、桃農家など若いスタッフが、家庭でも学校でもない第三の居場所を運営する。何かを押し付けるのではなく、相談に乗りながら夢の実現を応援し、多様な選択肢を示す。職場体験などを通じて、地元への愛着を育んでもらう。 開設から5年で登録者は市内の中高生の約1700人に。高校生の頃に通った人は、海外留学を経てスタッフに加わった。東京の大学に進学後に地元の活性化に取り組む団体を立ち上げた人もいて、種は芽吹き始めている。 市外に出た人に韮崎の魅力を発信するウェブマガジンも続ける。コワーキングスペース整備など街づくりの新事業も進め、活動の幅は広がる。
地域再生準大賞

こまちぷらす

(横浜市)

こまちぷらす

子育てを孤立させない

「子育てが『まちの力』で豊かになる社会へ」を合言葉に、居場所となるカフェを運営する。子どもの発達への不安や介護との両立…。悩みを抱え、孤立しがちな人々が心を開いて語り合える。手作り雑貨の委託販売や各種イベントを通じて、社会との「つながり直し」を目指す。 6人のママ友が2012年に立ち上げ、スタッフ約50人、登録ボランティア約200人に発展した。住民や企業と連携し、地域内外の900の家庭に出産祝いを贈るプロジェクトなども運営している。
地域再生準大賞

石徹白洋品店

いとしろようひんてん

(岐阜県郡上市)

伝統着発信、若者の拠点に

白山連峰の麓にある240人の集落、石徹白に伝わる作業着のズボン「たつけ」。直線裁断で端切れを出さず、ゆったりしているのに外見はシャープな斬新さに衝撃を受けた移住者が、伝統をデザイン性の高いファッションによみがえらせた。 自然素材を生かそうと藍や草木染を取り入れる。安価ではないが、オンラインや都会での展示会でつながった人々から支持され、年400着を全国に出荷している。 平野馨生里代表取締役は小水力発電に取り組む傍ら、地域の伝承を聞き書きする中でたつけを知り、2012年に起業。移住者が働き、若いインターンを受け入れる拠点にもなっている。
地球の未来賞&東海北陸ブロック賞

アノミアーナ 「ギザギザ湾・美化美化計画」

(福井県嶺南地方)

ブロック賞

海ごみを宝に、共感広がる

プラスチックなど各国のごみが冬場に小規模集落に大量に押し寄せ、処分に悩む若狭湾沿岸地域。厳しい実態を多くの人に伝え、大好きな海を将来に引き継ぎたい―。地元の女性らが動いた。
2019年から実態調査や回収、分別に取り組み、一部をカラフルなアクセサリーや皿に再生。眼鏡のまち福井県鯖江市の業者と、ペットボトルごみを、サングラスに商品化することに成功し、東京で注目商品となった。体験学習や教育旅行受け入れにも力を入れ、地域に活気を呼び込む。

北海道・東北ブロック賞

にかほ出前商店街振興会

(秋田県にかほ市)

ブロック賞

高齢者へにぎわい届ける

過疎や店舗減少で買い物に行きづらい高齢者のため、地元商工業者が公民館などに出向いている。生鮮品や日用品の販売、美容や包丁研ぎのサービスも。2010年に開始、井戸端会議も楽しめる地域に不可欠な存在となった。店側にとっては家の修理など新たなビジネス機会も生まれる。新型コロナウイルスコロナ禍で休止後、住民の声に後押しされて再開した。
関東・甲信越ブロック賞

産科婦人科舘出張佐藤病院

さんかふじんかたてでばりさとうびょういん

(群馬県高崎市)

全世代の女性の健康守る

江戸中期から地域医療を担う女性専門病院が、企業や自治体、教育機関を巻き込み、赤ちゃんからお年寄りまで女性の健康を見守り続ける。妊娠前からの栄養指導、更年期の人やアスリートのケアに力を入れる。NPO法人を立ち上げ、子宮頸がん予防啓発のマラソン大会を開催し、LINE(ライン)を通じて思春期の心身に関する相談に広く応じている。
近畿ブロック賞

ヴィダ・リブレ

(和歌山県美浜町)

ひきこもる若者に集いの場

ひきこもりの人が集い、苦しみを共感し合える場を提供、医療専門家や同じ経験を持つスタッフが時間をかけて回復を支援している。2017年設立。精神科医の宮西照夫理事長は地元企業に若者らの採用を働き掛け、既に人以上が社会参加。臨床心理士の資格を取った人、新聞記者になった人も。スタッフ派遣による相談事業など丁寧な取り組みを続ける。
中国・四国ブロック賞

元気むらさくぎ

(広島県三次市)

ブロック賞

自分たちの手で
山村の未来開く

「わかた(自分たち)のことは、わかたで」。市町村合併で三次市の一部となった旧作木村で、江の川のカヌー公園や「川の駅」、グループホーム、農畜産物処理加工施設の指定管理、学校給食調理業務を一手に担う。自家用有償運送事業では住民が運転し、お年寄りの生活の足を確保。特産品を守るため、担い手不足で廃園の危機にあったナシ農園を継承した。
九州・沖縄ブロック賞

でんでん虫の会

(熊本市)

ブロック賞

1人暮らしを支えあう

元ホームレスの男性が孤独死したことをきっかけに2010年に「1人暮らしを支え合う」ために発足。通院や行政手続きの同行、身元引き受けからみとりまで行政がカバーできない部分を担う。老若男女が集う「おしゃべり会」も開催し、これまでにつながった人は約550人。新型コロナウイルス禍で電話対応を強化し、豪雨災害でも支援に力を入れた。
SDGs企業賞

九州教具グループ

(長崎県大村市)

ブロック賞

社会貢献社是に独自事業

終戦後、元小学校長が点字図書館づくりを支援する「愛の鉛筆運動」のために設立した文具会社が母体。事務機器分野で成長、ホテル経営などにも取り組む傍ら「社会に貢献すべし」の社是に基づく独自事業を展開する。地元の陶磁器「波佐見焼」の再興や、田畑を荒らすイノシシ肉の高級食材化、女性や外国人社員の積極採用と能力活用を実現。小中学校でのタブレットの活用支援も。原爆資料館などに寄せられた折り鶴の灰を生かした磁器製SDGsバッジで世界平和を訴える。
12thkyoso

ヘラルボニー

(盛岡市)

ブロック賞

障害者アートをブランドに

自閉症の兄を持つ双子の兄弟が、障害者によるアート作品の「圧倒的な世界観」に出会い、ネクタイやハンカチ、傘などファッションブランドとしての発信に取り組んでいる。創業から3年、社会にはびこる障害者への先入観を飛び越えて、無数の個性をさまざまな形で提案してきた。  各地で展示会を開催し、大手企業と相次いで提携するなどプロデュース力を発揮。世界のブランドに引けを取らないまでにクオリティーを高め、収益を作家へ還元するサイクルづくりを目指す。
選考委員長賞

ハーモニーネット未来

(岡山県笠岡市)

ブロック賞

安心社会へ支え合い30年

子どもに舞台芸術に親しんでもらう活動からスタート。岡山県南西部で30年以上、あらゆる世代、障害のある人や生活困窮者など全ての人が安心して暮らせる地域に向け活動を広げてきた。 買い物の代行や病院への付き添いなどを有償ボランティアで住民同士が支え合う仕組みは250人が会員登録、年間8千件近くの利用がある。子ども食堂や学習支援、多世代の居場所や障害児の活動の場づくり、ドメスティックバイオレンス(DV)被害者らの共同住宅、太陽光発電など事業は多岐にわたる。 NPOへの土地建物の寄贈に対する非課税措置も実現、国の制度改革につなげた。
優秀賞

第12回ノミネート団体のページで
活動の詳細を紹介しています

北海道・東北

カラカネイトトンボを守る会

(札幌市)
希少なトンボが生息、
失われゆく湿原保全に住民動く

だて噴火湾縄文まつり
実行委員会

(北海道伊達市)
世界遺産の縄文史跡を
地域づくりのエネルギーに

階上売り込み隊

(青森県階上町)
古木や巨木は郷土の宝、
ツアーやイベントで振興

巻組

(宮城県石巻市)
古い建物をシェアハウスに、
津波被災地に若者呼ぶ

公益のふるさと創り鶴岡

(山形県鶴岡市)
城下町を流れる川を再生、
祭りや舟下りで親水空間に

とみおかワインドメーヌ

(福島県富岡町)
ブドウ栽培に復興の願い込め、
海に臨むワイナリーを

劇団120◯EN

(福島市)
福島の歴史に若者の視点、 演劇でまちの魅力再発見

関東・甲信越

結いプロジェクト

(茨城県結城市)
つむぎの街にクリエイター集結、
マルシェやアート空間

三乗堂

(栃木県鹿沼市)
東照宮ゆかりの「木工のまち」で
女性3人が仏像修復

芝園団地自治会

(埼玉県川口市)
マンモス団地で外国人住民と共生、
イベントに学生協力

WOULD(ウッド)

(千葉県南房総市)
廃校が「住む・泊まる・学ぶ・食べる・働く」
空間に

自立生活サポートセンター・もやい

(東京都新宿区)
新宿で困窮者の生活基盤を回復、
つながり生み出す

阿賀まちづくり

(新潟県阿賀町)
厄介者のカメムシやヒルを資源に
町のファン増やす

ソマミチ

(長野県松本市)
森と共生、恵み生かし
豊かな地域経済、人の輪を

東海・北陸

小菅沼・ヤギの杜

(富山県魚津市)
荒れた棚田をヤギ放牧で復元、
稲作アートでにぎわい

木場潟再生プロジェクト

(石川県小松市)
絶滅した水草復活で水質改善、
五輪合宿チームも評価

丸子まちづくり協議会

(静岡市)
宿場町で各組織参加、
お年寄り外出支援や防災

デンソー

(愛知県刈谷市)
AIロボが収穫、自動車産業の
技術活用で次世代農業

グリーンクリエイティブいなべ

(三重県いなべ市)
自然や地域資源活用
「オシャレ、カワイイ」SDGs

近畿

安念寺いも観音保存会

(滋賀県長浜市)
高齢集落伝承の仏像保護に若者の力、
ネットで資金

○曽れい仙の郷

(京都府亀岡市)
特産タマネギ復活へ企業と連携し
ブランド化、新商品

ネクストエージ

(大阪市)
節電で割引企画、
少年野球と途上国支援つなぐ

クリーンアップ関西事務局

(神戸市)
海の環境保全へ、ごみを分類し
国内外でデータ共有

奈良地域デザイン研究所

(奈良市)
市民や研究者、企業つなぎ
地域のリーダー育成

中国・四国

里山生物多様性プロジェクト

(鳥取県南部町)
オオサンショウウオの町で、
若者らが環境学ぶ場づくり

島根半島四十二浦巡り
再発見研究会

(島根県出雲市)
東西に長い半島の神話、祭礼、
習俗、民謡を発信

うべナチュラルガーデナーズクラブ

(山口県宇部市)
四季折々7000本の植物を
無料公開、癒やしの場に

Creer(クレエール)

(徳島市)
障害者が生き生き働くレストラン、
子ども食堂や宅食も

どっかーん!!と観音寺を盛り上げ隊

(香川県観音寺市)
信金が多様な事業者と連携、
地元食材売り出す

三崎高校「せんたん部」

(愛媛県伊方町)
高校生が主体、アートイベントや
マルシェ、加工品開発

とさちょうものがたり

(高知県土佐町)
写真家らが地域の魅力発信やイベント、
障害者と協働

九州・沖縄

うきはの宝

(福岡県うきは市)
75歳以上が活躍、
地産地消の「ばあちゃん食堂」

おもやい

(佐賀県武雄市)
豪雨頻発、民間主体で
被災者のニーズ聴き、寄り添う

別府八湯温泉道実行委員会

(大分県別府市)
多種多様な湯巡るスタンプラリー、
近場の旅を先取り

焼畑蕎麦苦楽部

(宮崎県椎葉村)
循環型自然農法を継承、
食材生かし移住や観光客呼ぶ

奄美イノベーション

(鹿児島県奄美市)
島の伝統建築を宿泊施設に、
集落文化伝える

1万人井戸端会議

(那覇市)
自治会と連携し地域活動。
エジプトに公民館根付かせる

おきなわこども未来
ランチサポートコンソーシアム

(那覇市)
子ども食堂と支援企業・団体つなぎ、
善意の輪広げる