第14回受賞団体

ごあいさつ

全国の地方新聞47紙と日本放送協会、共同通信が地域の魅力アップや課題解決に取り組む団体を応援する「地域再生大賞」。第14回は「つながる、多様性が拓(ひら)く」をサブテーマに、新型コロナウイルスの5類移行で人々の動きが活発化する中、各地で躍動する団体が集いました。

現代は「予測不能な時代」と言われます。突然のように始まる戦争、未知のウイルスとの闘い、想定を超える大規模災害…。不安と隣り合わせの時代にあって、足元の課題に向き合う人たちのたくましさは、地域に元気と希望をもたらします。市街地の活性化、マイノリティーの理解促進、地域の宝の再発見など、さまざまなグループやプロジェクトが生まれ、つながり、重なり合うことで、地域を楽しく、暮らしやすく、そして強靭にしていきます。

昨秋にはホームページに、第1回からの受賞団体の活動を紹介したデータベースを構築しました。地域づくりの知恵や工夫のほか、担い手の熱い思いも伝わるはずです。地域再生大賞の蓄積が次の時代へと引き継がれていくことを願っています。

第14回地域再生大賞実行委員会
委員長 板谷 武
(山陽新聞社 編集局長)

【選考委員長講評】

多様な個がつながる

沼尾波子選考委員長(東洋大教授)

「つながる、多様性が拓(ひら)く」と題した今回、全国から優れた取り組みが寄せられた。豊かな地域の活動を受け継ぎ、次世代につなぐ活動もあれば、目の前の地域課題に向き合い、関係者が丁寧に対話を重ね、楽しみながら地域を守る活動も見られた。多文化共生やLGBTQへの理解、障がい者の参加と包摂に取り組む活動が複数推薦されたことが印象に残る。

大賞「貴志川線の未来を“つくる”会」は、廃線の危機に立ち向かったローカル鉄道の地元住民による活動が際立つ。存続運動は行政を動かし、鉄道事業は両備グループへ譲渡。約20年にわたり公共私(行政や住民団体、企業など)の連携によるローカル鉄道の存続・再生に取り組む。

準大賞「リンゴミュージック」はご当地アイドル「りんご娘」を育成。青森の文化と魅力を発信する人づくりとともに、情報発信を通じた新たな経済循環創出に取り組む。

地域課題はある。だが今ここにあるものを大切に、多様な個がつながり、各地で創造的な地域づくりが行われていることに希望をみた。

貴志川線の未来を“つくる”会

貴志川線の未来を“つくる”会

(和歌山市)

住民団結「乗って残す」

ネコの駅長や楽しいリニューアル電車で知られる和歌山電鉄貴志川線(14・3㌔)。海外からもファンが訪れる一方、他のローカル鉄道と同じく経営は苦しい。「乗って残そう」を合言葉に、イベントなど住民主体の活動を続ける。

かつての運行会社、南海電鉄が撤退を表明し、2004年に結成。「絶望的な状況」で生活の足の大切さを説いて回り、一時期は会員が6千人を超えた。大きなうねりとなった運動は存続の原動力に。公的支援を引き出し、06年に両備グループ(岡山市)が運行を引き継いだ。

鉄道会社や行政と連携して利用促進に取り組み、05年度に192万人だった乗客数は、15年度は232万人となった。タケノコやジャガイモ掘り、クリスマス電車などを通じて沿線の魅力をアピール。恒例の「貴志川線祭り」では高校生もバンド演奏で盛り上げる。

新型コロナウイルス禍で乗客数は激減した。「少子高齢化で大変な危機感がある」と木村幹生代表。線路や車両の公有による経営安定化を求め、特産品づくりも進める考えだ。

準大賞

リンゴミュージック

(青森県弘前市)

アイドル育成、地元に誇り

アイドル活動を通じて子どもたちの才能を磨き、まちを元気に―。月謝無料の芸能スクールを20年以上にわたって続ける。所属グループ「りんご娘」はご当地アイドルの先駆けとなり、質の高いパフォーマンスを披露している。元メンバーの王林さんは今や全国区で大活躍を見せている。リンゴ栽培などの第1次産業や青森の魅力をPR。「県内の認知度ほぼ100%」と自認し、県民の応援団として定着した。

代表取締役の樋川新一さんは「都会の人がお金で買えない、きれいな水、豊かな食や文化がある。素晴らしい環境が音楽や芸術の感性を育む。都会と地方が逆転する時代は来る」と強調する。

選考委員長賞

神山まるごと高等専門学校

(徳島県神山町)

未来変える力、山里で培う

テクノロジーとデザインで人間の未来を変える起業家を育む。とびきりユニークなコンセプトを掲げて中山間地に昨年開校し、大きな注目を集める。全寮制で、学費は企業から集めた100億円規模の基金を活用して実質無償。課外活動に多くの有名な起業家が講師として参加する。

理事長は2010年に町内初のサテライトオフィスを設けたIT企業経営者。「日本のシリコンバレー」を目指し、移住や起業支援に取り組む地元関係者と思いが重なった。町は無償で用地を貸与し、旧中学校舎を譲渡。給食の食材の多くは地元産。住民は農作業などを通じて学生と交流を深め、学校づくりを応援する。

特別賞(インクルーシブ・パートナーシップ賞)

大阪障害者雇用支援ネットワーク

(大阪市)

労使連携、制度に先行

1996年に設立され、企業や労働組合、支援団体、行政の関係者らが、開かれた協働の場を築き上げた。身体や知的、精神といった障害の種類は問わず、制度からこぼれ落ちる新たな課題に対応してきた。行政や制度に先行する形で、障害者の就労や再チャレンジを後押しするインターンシップなど、独自の事業を展開してきた。当事者が気軽に相談できる窓口を設置。特別支援学校ではなく一般学校の生徒や学生を対象としたインターン、企業で働く障害者らの交流会にも取り組む。

特別賞(ダイバーシティー賞)

ここいろhiroshima

(広島市)

違いは魅力、一人じゃない

性の在り方に悩む子どもが安心して過ごせる場をつくっている。「違いは魅力。一人じゃないと伝えたい」。思春期に同様の生きづらさを感じていた、性的少数者の當山敦己さんと高畑桜さんが2018年に始めた。月一度の交流会には大人も含め延べ1600人以上が参加。学校の授業や教員研修で自らの体験を伝え、LINEによる相談の登録者も約800人に。支援する仲間も増え、子どもが将来に希望を持てる社会を目指す活動は広がっている。

特別賞(地域にぎわい創出賞)

おかげ祭り振興会

(宮崎県都城市)

「本物」追求し絆復活

昨年で31回目を数える都城の夏の風物詩。袢纏などの装束やみこし、組織の在り方を全国の名だたる祭りから導入した。単なる「物まね」ではなく「祭りは先人たちが地域維持のためにつくり上げた仕組み」と温故知新の精神で「本物」を追求し続け、コミュニティーの再生につなげた。20~30人が手弁当で始めた祭りは、補助金に頼らず厳格な秩序を重視する理念が市民らの共感を得て、祭り衆は2日間で延べ約千人にまで拡大。多くの子どもも参加し、約4万人の観衆を集める。

ブロック賞北海道・東北

遠野山・里・暮らしネットワーク

(岩手県遠野市)

農家民宿で民話の里に集客

グリーンツーリズムを柱に、農家民宿や教育旅行などさまざまな取り組みで「民話の里」遠野に人を呼び込んでいる。自動車学校と連携して合宿免許の宿泊先に農家民宿を活用、大きな注目を集めた。市中心部の活性化を図ろうと、お店を巡りながら店主とのおしゃべりを楽しむツアーも実施。2023年からは高齢化する昔話の語り部の後継者育成講座を始めた。

ブロック賞関東・甲信越

Mt. ファームわかとち

(新潟県小千谷市)

農業の魅力発信し交流拡大

人口80人の山あいの若栃集落で、棚田米をはじめとする地元農産物の加工・販売や農家民宿を通して、農業の魅力発信や交流人口拡大を図る。中越地震(2004年)からの復興の取り組みが発展。高齢化で耕作できなくなった水田の作業を受託、大学生のファームステイなども受け入れる。農家民宿は築160年の古民家を活用、地元食材を使った料理が好評だ。

ブロック賞東海・北陸

園むすびプロジェクト

(富山県舟橋村、団体所在地は富山市)

子ども主役の公園にぎわう

富山市に隣接し「子育て共助」を掲げる富山県舟橋村で公園づくりに取り組む。遊具製作や催しの企画を担うのは「こども公園部長」の小学生たちだ。大学生や子育て世代も加わり、人の輪が拡大。クラウドファンディングで資金を集め、企業の協力も得た。昨秋のイベントには約1500人が来場。公園が縁を結ぶ場となり、幅広い世代が交流するコミュニティーづくりにつながっている。

ブロック賞近畿

上宮津地域会議

(京都府宮津市)

地域を挙げて多彩な活動

元気な高齢者を中心に自治会や敬老会などを巻き込み、地域を挙げて多彩な活動を展開する。市内の高校と連携し、廃校となった小学校のプールを使って高級魚・ホンモロコを養殖。周囲の山々では、天然杉や古道を観光資源として生かそうと遊歩道を整備したり、閉鎖したスキー場跡地でイベントを開催したり。移住支援や耕作放棄地活用にも取り組む。

ブロック賞中国・四国

美甘地域の空き家再生と移住者、高齢者支援プロジェクト

(岡山県真庭市)

高齢者と移住、一体で支援

二つの住民団体が一体となって高齢者の生活支援と空き家管理・移住促進に取り組む。「くらしサポート黒田」は、高齢者の買い物や通院を車による送迎で支援。利用者との信頼関係を築く中で空き家情報を得ると、「グランパ美甘」が管理・修繕し、入居希望者に紹介、移住につなげている。移住者が地域に溶け込めるよう生活相談などのサポートも欠かさない。

ブロック賞九州・沖縄

やどかりサポート鹿児島

(鹿児島市)

住まいを確保、孤立防ぐ

2007年に設立され、貧困や障害、高齢などを理由に住居確保が難しい人を支援する。連帯保証人がおらず、賃貸住宅が借りられない人に「地域ふくし連帯保障」を提供。福祉従事者が定期的にフォローして孤立を防いでいる。買い物や入退院の付き添いなど、支援を受ける人同士の「互助」も後押しする。これまで700人以上が利用し、再び地域とつながるきっかけを得た。

優秀賞

北海道・東北

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レター・ポスト・フレンド相談ネットワーク

(札幌市)

ひきこもり当事者が手紙で励まし合い、居場所つくる

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撮りフェスin室蘭実行委員会

(北海道室蘭市)

工場夜景と自然が共存、特別スポットも撮影可

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八戸童話会

(青森県八戸市)

子どもたちにおとぎ話、ワクワク感届けて100年目

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東北チャレンジコミュニティ

(仙台市)

インターン公募、大震災で疲弊した地域の課題に挑む

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プロジェクト8

(秋田県八郎潟町)

若い世代が夏の「一夜市」開催、町を盛り上げ

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おぐにマルチワーク事業協同組合

(山形県小国町)

移住者がさまざまな地域産業を担う、生活基盤築く

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富岡町 3・11を語る会

(福島県富岡町)

原発事故で被災した町で語り部を育成、演劇で交流

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HAMADOORI13

(福島県いわき市)

被災沿岸部で若手経営者が広域連携、起業家育成

関東・甲信越

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赤羽緑地を守る会

(茨城県日立市)

水辺の公園の環境を保護、子どもたちの観察会も

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真岡まちづくりプロジェクト

(栃木県真岡市)

学生が中心市街地活性化、緑地や公共スペース活用

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馬場川通りアーバンデザインプロジェクト

(前橋市)

川沿いの道をリニューアル、車中心から歩きやすい通りへ

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ファインドチチブ ちちぶシルク研究分科会

(埼玉県秩父市)

絹織物産地で、レトロなおしゃれ着の良さを見直す

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田淵チバニアンズ

(千葉県市原市)

地層「チバニアン」の魅力を紹介、ガイドも育成

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寺島・玉ノ井まちづくり協議会

(東京都墨田区)

宅地の中に農園を整備し憩いの場に、幻の江戸野菜復活

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三浦半島地域活性化協議会

(神奈川県横須賀市)

地元経済界や大学が自治体の枠超え連携、創業支援

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移住したクリエイターたちによる、まちづくりのエコシステム

(山梨県富士吉田市)

地域おこし協力隊OBらがつながり、得意分野で活躍

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まつもとフィルムコモンズ

(長野県松本市)

8ミリフィルムを市民から集め「地域映画」を製作

東海・北陸

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YOU-I

(石川県野々市)

在住外国人と地域つなぐ、ネットワークの力で活性化

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なろっさ!ALLY(アライ)

(福井県越前市、福井市など)

性的少数者への理解拡大を、映画祭や講演会

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岐阜まち家守

(岐阜市)

空き家や古民家を改修、生活文化や歴史を継承

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テンカラセン

(静岡県熱海市)

土石流被災地で避難者、住民、観光客をつなぐ

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日本福祉協議機構

(名古屋市)

障害者に働く場、中山間地域再生と共存の村づくり

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愛伝舎

(三重県四日市市)

在住外国人の生活向上、社会進出、教育を支援

近畿

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島学区まちづくり協議会

(滋賀県近江八幡市)

古くからの農村の宝物掘り起こし、交流人口拡大

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リバークリーン・エコ炭銀行

(兵庫県加古川市)

河川の浄化に役立つ竹炭を活用、里山再生

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夢咲塾

(奈良県大和高田市)

静御前ゆかりの地で文化、伝統産業を次世代へ

中国・四国

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産後ケア「やわらかい風」

(鳥取市)

夜泣きの赤ちゃんと母親の宿泊支援、父親の交流会

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あしぶえ

(松江市)

山あいの小さな劇場が拠点、演劇を通じて人づくり

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金子みすゞ顕彰会

(山口県長門市)

夭折の童謡詩人の世界を故郷から全国に発信

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綾川町さぬきうどん研究会

(香川県綾川町)

うどん打ち教室やイベント、郷土の食文化を後世へ

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タンデム自転車NONちゃん俱楽部

(松山市)

障害者にサイクリングの機会、交流の輪広がる

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高知県綱引連盟

(高知県土佐市)

名物イベントの地元で、人々のつながり強める

九州・沖縄

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鯰田・浦田活性化プロジェクト

(福岡県飯塚市)

地域の小唄を復活、収穫を終えた田んぼでイベント

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みないろ会

(佐賀市)

音声ガイドや字幕付きのバリアフリー映画で人々結ぶ

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五島日本語学校

(長崎県五島市)

ベトナム人留学生と島民が交流、日本との架け橋に

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走潟マルメロ会

(熊本県宇土市)

かつての特産果物から細川家ゆかりの伝統菓子を再現

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リエラ

(大分県日田市)

災害多発地域で被災者に寄り添う、移住・定住支援

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共同売店ファンクラブ

(沖縄県豊見城市)

人と人をつなぐ場としての価値を再発見、サミットも

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こども家庭リソースセンター沖縄

(沖縄県沖縄市)

子の一時預かりや孤立家庭支援、ひとり親の就職も