13回地域再生大賞結果発表
13回地域再生大賞結果発表

ごあいさつ

 全国各地の新聞46紙と共同通信社が主催する地域再生大賞は、13回目を迎えた今回、「創ろう新時代 希望掲げて」をサブテーマに、ポストコロナを見据えた取り組み、新しい担い手の活躍、地域からの発信力に着目しました。
 農福連携のパイオニア、格差のない読書環境づくり、漂着ごみを起点にした環境保護活動-。人と人、人と地域の関わりを見つめ直す機会ともなったコロナの時代を経て、大賞、準大賞をはじめ各賞からは、支え合って共に生きていく意欲と力が地域にしっかり根付いていること、そして視野を広げながら未来に向けて膨らんでいることがうかがえました。ともすれば顔を下げがちな厳しい時代に、各団体の存在と活動は大きな希望です。
 今回を含めて延べ650団体に及ぶ受賞団体の活動をまとめた「まちづくりチャレンジ650」は3月、ウェブ公開します。地域をもり立て、そこで生きる喜びへのヒントを得て、それぞれの活動がさらに熱気のこもったものになることを願ってやみません。

第13回地域再生大賞実行委員会
委員長 小市 昭夫
(信濃毎日新聞社 取締役編集局長)

【選考委員紹介】

 第13回地域再生大賞の選考委員は次の皆さん。

【選考委員紹介】

第13回地域再生大賞の選考委員は
次の皆さん。

沼尾波子氏

沼尾 波子さん(ぬまお・なみこ)=委員長 慶応大大学院修了。2017年から東洋大教授。地方財政が専門で地域づくりを支える行財政システムを研究

大桃美代子氏

大桃 美代子さん(おおもも・みよこ)タレント。新潟県中越地震で実家が被災したのを契機に食育や農業、地域振興に取り組む。新潟食料農業大客員教授

佐藤 宏亮さん(さとう・ひろすけ)早稲田大大学院修了。18年から芝浦工業大教授。建築の視点から各地のまちづくりに参画している。愛知県出身

藤波 匠さん(ふじなみ・たくみ)東京農工大大学院修了。15年から日本総合研究所上席主任研究員。地域再生、人口問題などが専門。神奈川県出身

【選考委員長講評】

【選考委員長講評】

営みを次世代につなぐ

沼尾波子選考委員長(東洋大教授)

「創ろう新時代、希望掲げて」をうたった今回、さまざまな地域課題にチャレンジする優れた取り組みが多数寄せられた。活動実績が3年に満たない団体が比較的多かったが、実績は未知数でも、アイデアや手法、戦略には目をみはる活動が多かった。 空き家活用、多文化共生、自然環境の保全再生、子ども・子育て支援など、地域課題が多様化・複雑化するなかで、活動の専門性も高くなっている。また、美しいデザインや、機能性を追求した地域資源の活用、文化の発信を行う事例も多く、印象に残った。地域の暮らしを楽しみ、その営みを次の世代につなごうという希望を掲げた活動には元気づけられた。 大賞「花の木農場」は農福連携のパイオニア。障がい者の就労と社会参加に向けて50年近く事業を展開してきた。最近では、地域内外の担い手との連携・交流を通じた新たな社会参加と地域振興にも挑戦する。 準大賞「北海道ブックシェアリング」は、書物や絵本を媒介に人と人とをつなぎ、学校図書館への支援にも取り組む。「対馬CAPPA」は、海外からの漂着ごみというグローバルな課題に地域で立ち向かう。

第13回地域再生大賞

花の木農場

(鹿児島県南大隅町)

花の木農場

約100人が支え合い、
働く農福連携のパイオニア

九州本土最南端の町で1972年設立の社会福祉法人が運営する「農福連携」のパイオニア。40ヘクタールの敷地で障害者ら約100人が支え合い、汗を流す。過去に非行に走った人やシングルマザーなど、生きづらさや働きづらさを抱える人も受け入れてきた。 耕作放棄地も活用し茶やニンニク栽培、野菜のハウス栽培、水稲、養豚などを広く手がけ、大規模な企業的経営に挑む。食品の安全性や環境、人権への配慮は国内外で認められた。ハム・ソーセージ、パンなどの加工、レストランや販売まで担う「6次産業化」を進めている。 施設の利用者は共同生活をし、仕事に応じて賃金を得ている。一般就労につながった人もいるなど自立を後押しする。鹿児島市内にも通所事業所などを設け、ものづくりと販売で社会とつながる。 仕事をつくるだけでなく、早くからグリーンツーリズムや収穫体験、農家民泊にも取り組み、直売所やレストランは地域の交流拠点となっている。今後は観光分野にも力を入れていく。
13回準大賞

北海道ブックシェアリング

(北海道江別市)

北海道ブックシェアリング

古書提供や絵本の交換会、
格差のない読書環境を

本は子どもたちの心の宝物。ところが広大な北海道では書店や図書館へのアクセスが厳しく、学校図書館の蔵書が少ないとのデータもある。格差のない読書機会の整備に向けた多彩な活動を展開する。 2008年の設立以来、読み終えた本を引き取り、保育園や学校、施設などに7万冊超を提供した。古書のバザーや絵本の交換会を開催、地元商店街ではマルシェやフードコートもある毎月のイベントを続ける。学校図書館づくりを支援するため、見本となる新刊図書など約3千冊を常設展示し、アドバイザーを派遣している。活動財源はバザーやイベント収入、寄付金などで賄う。
13回準大賞

対馬CAPPA

(長崎県対馬市)

対馬CAPPA

漂着ごみ対策で調査研究、
日韓交流、環境学習ツアー

多様な生態系に恵まれる一方、900キロを超える海岸線を持つ国境近くの島々には、国内外から大量のプラスチックごみが漂着し、景観や産業に甚大な影響を与えている。行政の取り組みを補完し、調査研究や普及啓発活動、海岸清掃など幅広い活動を展開する。 グローバル課題をアピールするため、日韓のボランティア交流を推進。学校や団体向けにシーカヤックで海岸沿いを巡るスタディーツアーを実施。出前講座やイベントで、スーツケースに漂着ごみを飾り付け、視覚に訴える「ミュージアム」に取り組む。大学や国の組織、島外企業とも連携し、ロボットによるごみ調査の自動化も目指す。
きぼうのまち賞

東の食の会

(福島県浪江町=東北での活動拠点、
団体所在地は東京都品川区

東の食の会

福島の食のファン拡大へ
商品開発や農園、輸出支援

「生産者は〝被災者〟じゃない、〝ヒーロー〟だ」。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で被災した福島県浪江町を拠点に、マーケティングやブランディングを駆使して福島の食復興を目指す。国内外に魚介類の販路を開拓し、農家と東京のシェフをつなぐ。高付加価値作物を育てる農園も運営。岩手の会社と開発した洋風サバ缶を大ヒットさせるなど実績がある。浪江に移住した高橋大就専務理事は「最もハンディのある場所でブランドを創れるかという挑戦だ」と力を込める。
エコフレンドリー賞

逆川こどもエコクラブ

(水戸市)

逆川こどもエコクラブ

ホタルやサケ守り成果発信、環境保護の担い手に

水戸市のシンボル偕楽園と千波湖周辺で、楽しく学びながら水辺環境の改善に取り組む。大学生から保育園児まで100人以上が鎌を手に除草や間伐を行い、あぜを築き、自ら成果を発信する。 2005年に幼児6人と親が結成し、開発や休耕田の増加で多くが姿を消したホタルの再生に成功。サケの保全やビオトープ造成も手がけ、住民や行政、企業も巻き込んで活動の輪を広げた。約㌶の区域で豊かな里山を再生し、最近は絶滅が危惧される魚など多くの生物が確認されている。
歩いて楽しいまちづくり賞

ミライズ

(新潟県新発田市)

ミライズ

温泉街の空き店舗に日本酒やスイーツの専門店

新潟県北部・月岡温泉で旅館・ホテルの若手経営者らが、空き店舗や空き家を活用し、歩いて楽しめる街にしようと2014年に合同会社を結成した。おしゃれな雰囲気の地酒やスイーツ専門店など9店をオープンさせた。新たな店は基本的に既存店の収益で作っており、幅広い県産品を取り扱い、新潟の食の魅力を発信。メインストリートににぎわいを生み、クラフトビール醸造所が進出するなど地域の発展につなげた。新型コロナウイルス収束後の客足回復に期待が高まる。
ダイバーシティー賞

コリアタウン・多文化共生のまちづくり

(大阪市)

コリアタウン・多文化共生のまちづくり

国際色豊かな街さらににぎわい、暮らしや教育向上

韓国など外国籍の住民が多く住む大阪市生野区。「大阪コリアタウン」近くの小学校跡地では、多彩なルーツを持つ人々の共生に向けた拠点が近く全面オープンする。子どもの居場所や学習支援、カフェ・レストラン運営などを通じ「誰ひとり取り残さない」まちづくりを目指す。コリアタウンは韓国食材やファッションで若者らから人気。元々の三つの商店街が、さらなる活性化に向けて統合して誕生したばかり。二つの動きを両輪として、人々の暮らしや教育の向上につなげていく。
優秀賞 北海道・東北

男鹿ナマハゲロックフェスティバル実行委員会

(秋田県男鹿市)

男鹿ナマハゲロックフェスティバル実行委員会

住民が自ら運営、東北を代表する野外音楽フェスに

「若者が誇りを持てる男鹿に」と、若手経営者ら有志が文字通りゼロから作り上げた。住民が手弁当で出演交渉や運営に当たる。2007年の初回は小規模の屋内開催だった。宣伝費も乏しい中、口コミで音楽関係者に存在が広まった。国内有数のバンドを多く招き、1万人以上が来場する東北を代表する野外音楽フェスに成長し、開催は15回に達した。
優秀賞 関東・甲信越

神奈川大体育会サッカー部・
竹山団地プロジェクト

(横浜市)

神奈川大体育会サッカー部・竹山団地プロジェクト

団地を学生寮に、防災訓練や高齢者のスマホ教室

竣工から約50年がたち、住民の高齢化も進んだ大規模公社住宅の一部を学生寮とし、部員が住んで地域の課題解決を目指す。団地の清掃や防災訓練、花火大会の手伝い、高齢者のスマートフォン教室などを通じて活発に交流。近隣の休耕地で野菜を栽培し、団地の一角に設けた部の食堂で調理する。住民の健康推進に向けたジムや交流施設の設置も目指す。
優秀賞 東海・北陸

ふるさと美浜元気プロジェクト

(福井県美浜町)

ふるさと美浜元気プロジェクト

地元の良さや課題解決のアイデアを小学生が発信

町内全3小学校の主に3~6年生の児童が、合同で町の良さや課題について探求学習し、課題解決のアイデアを地域に発信・提言している。子どもたちは主体的に町の人たちに話を聞き、古里への愛着を育む。活動は大人たちにとっても改めて地域に目を向けるきっかけとなっている。タブレット端末を活用し、3校の児童同士の連携や情報共有につなげている。
優秀賞 近畿

こどもソーシャルワークセンター

(大津市)

こどもソーシャルワークセンター

生きづらさ抱える子の居場所、一緒に食べて楽しむ

貧困や不登校など、さまざまな事情の子どもが自分らしさを取り戻せる「居場所」を提供している。ボランティアやスタッフが一緒に夕食を取り、子どもたちの好きなことをして過ごす。自ら生きづらさを抱えてきた若者が相談員となり、交流サイト(SNS)を通じて同じ悩みを持つ子どもたちに寄り添い、必要な支援につなげる事業にも取り組んだ。
中国・四国ブロック賞

日生町(ひなせちょう)漁協による
アマモ再生プロジェクト

(岡山県備前市)

日生町漁協によるアマモ再生プロジェクト

1985年から魚のすみかとなるアマモ場を再生

全国に先駆けて1985年から魚のすみかとなるアマモ場を再生・保全に取り組む。12ヘクタールに激減していたアマモ場を250ヘクタールまで回復させ、戻ってきた魚介類も。全国有数のカキ産地の利点を生かして、カキ殻を海底環境の改善に活用した。子どもたちの環境学習や体験ツアーの場を提供するほか、環境調査や研究にも協力。「里海」づくりを地道に続けてきた。
優秀賞

第13回ノミネート団体のページで
活動の詳細を紹介しています

北海道・東北

室蘭イタンキ浜鳴り砂を守る会

(北海道室蘭市)
海岸の環境を守る人育成へ、出前講座や漂着物展示

はちのへ未来ネット

(青森県八戸市)
子どもと親世代が集い、話し合い、悩みを共有できる場

NEXT REVOLUTION

(岩手県八幡平市)
起業家養成のプログラミング合宿、移住のきっかけに

六日町合同会社

(宮城県栗原市)

空き店舗改修し移住者に提供、商店街に希望生む

湯50(ゆ ごじゅう)

(山形市)
蔵王温泉の若手経営者らが空き物件をカフェとバルに

なみえアートプロジェクト「なみえの記憶・なみえの未来」

(福島県南相馬市)
知的障害のある作家が住民の思いを屋外アートで表現

関東・甲信越

ダイバーステイ

(栃木県小山市)
条件の悪い空き家を生かした農村民泊に多くの若者

前橋工科大 堤洋樹研究室

(前橋市)
公営団地にシェアハウス、学生が住んで課題解決

暮らしの編集室

(埼玉県北本市)
団地の空き店舗がジャズ喫茶と工房に、住民の居場所

NIPPONIA SAWARA

(千葉県香取市)
北総の小江戸で古民家を宿泊施設やレストランに

東京スリバチ学会

(東京都江東区)
凹凸地形の街を歩いて魅力発掘、全国に連携拡大

EDGE

(山梨県小菅村)
古民家を再生、特産食材使い村を「丸ごとホテル」に

つくえラボ

(長野県富士見町)
高齢者が移住者に農業技術伝授、アートプロジェクトも

東海・北陸

善商

(富山県入善町)
商工会の有志が設立し特産品開発、高校生も巻き込む

当目

(石川県能登町)
棚田米を商品化し伝統食復活、学生の合宿受け入れ

加子母木匠塾実行委員会

(岐阜県中津川市)
大学生が木造建築を実践的に学ぶ合宿は約30年に

シズオカノーボーダーズ

(静岡市)
障害者、健常者が一緒にダンスやパフォーマンス

尾州のカレント

(愛知県一宮市)
日本一の毛織物産地の魅力を若手社員が発信

むすび目Coーworking

(三重県南伊勢町)
共働スペースやシェアキッチンで人をつなぎ、移住支援

近畿

木津川アート

(京都府木津川市)
木造公民館や米蔵、畑がアート作家の展示会場に

草やまの草むら

(兵庫県丹波篠山市)
森や山で遊び、学びながら、これからの衣食住を探求

奈良新しい学び旅推進協議会

(奈良市)
歴史や文化が教材、修学旅行生らに深い学びを提供

和歌祭保存会

(和歌山市)
徳川家ゆかりの伝統行事存続、失われた芸能を復活

中国・四国

未来

(鳥取県倉吉市)
ウオーキング大会に国際交流、次世代の郷土愛育む

江の川鉄道

(島根県邑南町)
廃線の駅舎や線路を生かしトロッコ運行、観光客呼ぶ

基町プロジェクト

(広島市)
復興支えた公営アパート群、アート核に記憶伝え残す

3in(サンイン)

(山口県長門市)
高校生が持続可能な最新の魚養殖や販売に挑戦

徳島文学協会

(徳島県神山町)
地方でハイレベルな文芸誌、受賞作家相次ぎ誕生

天体望遠鏡博物館

(香川県さぬき市)
廃校を活用、望遠鏡の寄贈を受け修復して展示

今治コミュニティ放送

(愛媛県今治市)
市民パーソナリティーが地域に根差した番組づくり

こうち絆ファーム TEAMあき

(高知県安芸市)
障害者やひきこもりの人の就農を支援、林業とも連携

九州・沖縄

子どもパートナーズHUGっこ

(福岡県古賀市)
子育てを支援、小中高生の居場所をつくり夕食提供

灯す屋

(佐賀県有田町)
歴史的町並みで空き店舗活用のイベントや移住支援

坂本町災害支援チームドラゴントレイル

(熊本県八代市)
山道を走る愛好家らが災害復旧やシカの食害対策

日田もりあ下駄い

(大分県日田市)
多世代のメンバーが特産のげたでダンス、地域を発信

満月食堂

(宮崎県延岡市)
離島のにぎわい復活へ、地元の魚提供、加工食品も

ハッピーモア

(沖縄県宜野湾市)
小規模農家が育てた野菜を直売、出荷量を増やす

中城村南上原組踊保存会

(沖縄県中城村)
創作組踊で新興住宅地の子どもを健全に育てる