

ごあいさつ
2024年に生まれた子どもの数は、1899年の統計開始以降初めて70万人を割り込みました。この国の人口が減少局面に入ったのは15年以上前のこと。加速する少子高齢化で、地域社会の担い手不足は深刻になる一方です。
そうした苦境の打開に向けて奮闘する団体を応援しようと、地域に根ざす全国の地方新聞47紙と共同通信社が創設したのが「地域再生大賞」です。第16回となる今回は「明日をともに創る~吹き始めた風」をサブテーマに据えました。
毎回数多くのノミネートがあり、受賞団体は今回で延べ800を超えました。地域の特産品のブランド化や移住者の誘致、子ども食堂の運営…など、取り組む分野や形態は実に多種多様です。そこに通底しているのは「人と人のつながりの紡ぎ直し」で、コミュニティーを活性化させるヒントの宝庫です。公式サイトで各団体の活動を紹介していますので、ぜひご参照ください。
残念ながら人口減を反転させる特効薬はなく、地域を維持・再生するには知恵を絞るしかありません。各地で数多くの種がまかれ、力強く育ちつつあります。「吹き始めた風」が勢いを増すことを心から願っています。
第16回地域再生大賞実行委員会
委員長 小森準平
(神戸新聞社編集局長)
【選考委員長講評】
固有の価値、地域の力へ
沼尾波子選考委員長(東洋大教授)
地域の資源や固有の価値を生かし、新たな社会経済を築こうとする動きが広がっている。風土や文化、暮らしを見つめ直し、唯一無二の価値を地域の力へと転換する各地の取り組みに勇気付けられた。
大賞「東シナ海の小さな島ブランド」は、空き家活用や食・宿・人材育成を横断的に展開し、島の暮らしの価値を経済活動に結び付けている。人々の思いを大切に、小さな共同体をつなぎ、持続可能な島づくりを丁寧に進める。
準大賞「梅ボーイズ」は、梅農家自らが生産・加工・販売までを担い、SNS発信と機械化により業界改革に挑む。新たな働き方のモデルを示し、若者の共感と参加を得ながら、梅文化継承と産地再生を進める。
同じく準大賞「五島つばき蒸溜所」は、五島の自然と歴史を「慈しみ」の物語として込めたクラフトジンを製造する。手仕事と土地性を重視し、ジンという作品を通じて、島の物語を多くの人々に伝える。
暮らしに根ざした価値を丁寧にすくい上げ、共感を形にする創造によって、人や資源のつなぎ直しが起こっている。多様な担い手が関わり、地域に新たな風が吹いているのを感じた。


東シナ海の小さな島ブランド
(鹿児島県薩摩川内市)
島らしさを観光や商品に
東シナ海に浮かぶ甑島で2012年に創業。島らしさを大切にしながら、農水産物を活用した商品の開発・販売、古民家をリノベーションした宿泊施設やベーカリーなど、多彩な事業を展開し、雇用や移住の拡大につなげた。代表取締役の山下賢太さんは甑島出身。失われつつある島の文化や原風景を守りたいとの思いを活動の原点に据えている。
農家や漁業者と連携し、加工から販売までを担う6次産業化に取り組み、ダイダイのシロップやキビナゴのアヒージョなどを開発。拠点となる「山下商店」などで販売する。古い釣り宿をモダンに改装した客室4室の宿は、地物中心の食事や島の文化に触れる体験プログラムが好評だ。航路が廃止された港のフェリーターミナルを再利用したレストランや、空き家・集落再生を学ぶ研修旅行も手がける。
19年には県内の28有人離島で地域づくりに取り組む人たちのネットワーク「鹿児島離島文化経済圏」を立ち上げた。勉強会や事例報告会などを通し、個々の島の枠を超えた商品開発や企業間連携が続々と生まれている。


梅ボーイズ
(和歌山県みなべ町)
梅農家希望の若者育成
南高梅で知られる国内有数の梅の産地で就農希望の若者たちの育成を進める。地元出身で実家が梅農家の男性が「やりがいのある仕事にしたい」と2019年、20代で起業した会社が基盤。後継者不在などで放棄された梅畑を買い取り、栽培面積を増やしている。
梅干しの消費者のうち、1割は酸っぱいものを好む点に着目し、酸っぱい商品に特化して「梅ボーイズ」のブランドで販売。25年には梅170トンを生産し、売り上げは7億円を達成した。
また、傾斜地の耕作放棄地では備長炭の原木になるウバメガシを植林し、高価で売買される紀州備長炭を生産する環境作りも進める。


五島つばき蒸溜所
(長崎県五島市)
慈しの島でジン造り
大手酒造会社で商品開発やブランド戦略を担った3人の専門家が早期退職し、五島列島・福江島の小さな集落でクラフトジン専門の製造拠点を2022年に立ち上げた。潜伏キリシタンも暮らした土地を「慈しの島」とほれ込み、島民が集めたツバキの種やかんきつ類を香り付けに使う。現在は再生可能エネルギーだけで運営する。
「GOTOGIN(ゴトジン)」と名付けられた商品は全国の愛好家に支持され、サブスクリプション(定額利用)やふるさと納税の返礼品、お土産としても人気だ。五島ゆかりの芸術家とのコラボや、地元のホテルと連携したツアーを通じて島の魅力発信にも寄与している。


SET
(岩手県陸前高田市)
学生受け入れ交流人口拡大
東日本大震災の復興ボランティアをきっかけに移住した若者が創設した。「まちのために活躍する人づくり」を理念に活動、移住や交流人口の拡大で成果を上げている。都市部の大学生を対象にした地域づくりの実践スタディプログラムは2013年にスタート。集落の住民と交流を重ね、お互いのやりたいことをイベントなどにつなげている。これまでに約1500人が参加した。民泊による修学旅行は、陸前高田市内の約120家庭がホストとなり、年間延べ4千人の中高生を受けて入れている。


陽と人(ひとびと)
(福島県国見町)
規格外や廃棄の桃、柿の皮活用
地域資源を活用した農家の収益向上とともに「働く女性の健康」といった社会課題の解決も目指す。官僚や大手シンクタンク社員だった女性が、東日本大震災からの復興に取り組む県民の力になりたいと移住し、2017年に創業した。
特産でありながら規格外で廃棄されてきた桃を買い取って首都圏の小売店に卸し、柿の皮を加工した女性用ケアオイルを開発。大幅な食品ロスの削減に成功し、ケアオイルなどはブランド化して百貨店や大手通販で取り扱われている。


宮ノマエストロ
(横浜市)
多世代に心地よい空間
昔から住む高齢者と転入してきた子育て世代とが混在する地域で2018年から多世代が交流するコミュニティーカフェを運営する。フレイル(虚弱)予防や子ども食堂、学習支援塾を定期的に行っている。ほぼ毎日開催されるイベントは親子リトミックや認知症予防など多種多様だ。
多くのボランティアによって支えられ、サービスを提供する側、される側ともに心地よい、にぎやかな空間となっている。運営側には若者も加わり、次世代への引き継ぎも念頭に活動を続ける。


WATALIS
(宮城県亘理町)
復興の先へ、にぎわい創出
東日本大震災で津波被害を受けた町で住民が交流しながら働けるよう、古い和服の生地を引き取り、巾着袋など小物にリメークして販売する事業を始めた。着物の残り布の袋にコメなどを入れてお礼に贈る地元の風習がヒントだった。活動の輪は広がり、空き店舗を改装したカフェ、遊休農地での養蜂による商品開発なども展開、復興の先につながるにぎわいを創出している。


埼玉フードパントリーネットワーク
(埼玉県越谷市)
76団体が食料支援で連携帯へ食糧支援
ひとり親家庭などに食料を無料配布するフードパントリーに取り組む埼玉県内の76団体(2025年12月時点)が連携、企業などから寄贈された食品を10カ所に集約・保管し各団体に配布している。ネットワーク化で課題を共有できるようになったほか、安定的に食品を確保でき、食品ロス減少にもつながった。フードパントリーを始める人向けの手引書も発行、活動の拡大にも努める。


みえプラス
(三重県四日市市)
地元学生と企業をつなぐ
三重では県外に進学した学生が地元に戻って就職しないという問題が深刻で、学生と人手不足の県内企業をつなごうと2023年にプロジェクトを始めた。企業をスポンサーに開催するイベントはレクリエーション色が強く、合同説明会の「夜カフェ合説」や「スイーツ合説」は好評だった。賛同する企業は約400社に上り、約1300人の学生が登録する。


都市型農園プロジェクト「豊中あぐり」
(大阪府豊中市)
野菜づくりで社会参加促進
企業などを退職後、孤立しがちな高齢男性の社会参加を目的に、住宅街の空き地や老人ホームの屋上に農園を開設し、野菜や果物を栽培している。メンバーの現役時代のキャリアはさまざま。収穫物は朝市で安く販売したり、子ども食堂や生活困窮者支援として提供したりしている。ジャムづくりなど6次産業化にも取り組み、イベントで地域交流の機会もつくる。


広島都心会議
(広島市)
自由な議論で中心部に活力
再開発が進む広島市中心部で、多様な参加者が活性化に取り組む。県内外の企業約社が参画し、行政もオブザーバーで参加。企業の枠を超えて若手社員が活性化策を検討する「東千田塾」をはじめ、地域のまちづくり団体や学生らも加わったさまざまな意見交換の場を設けている。自由な議論から生まれたイベントや情報発信のアイデアが実践され、街に新たな活力を生み出している。


浜―街交流ネット唐津
(佐賀県唐津市)
水産資源回復に尽力
水産資源の回復を目指し、2022年から藻場再生や海洋プラスチックごみ回収を進める。25年までで藻場は0・77ヘクタール回復したと確認され、海洋プラごみの回収量は4・6トンに上った。
漁業者の経営状況改善のため、水産加工品の開発や受託製造・販売に取り組んだほか、一般向けに親子料理教室や漁業体験を開催して魚の消費拡大にも力を注ぐ。

北海道・東北

上美生(かみびせい)
(北海道芽室町)
暮らし支えるみんなのお店、交流拠点や移動支援も担う

室蘭市民美術館をささえる会
(北海道室蘭市)
市民美術館設置の原動力に、市とともに運営でも尽力

奥津軽社中
(青森県今別町)
移住者核に広がる交流、本州北端で過疎再生を目指す

新郷村ふるさと活性化公社
(青森県新郷村)
地元ミステリースポット活用、祭りやキャンプが人気に

南外さいかい市
(秋田県大仙市)
ミニスーパーを住民が運営。移動販売、通院支援も展開

鶴岡市三瀬地区自治会
(山形県鶴岡市)
森林資源を維持活用する自治会主導の循環型地域づくり

なみとも
(福島県浪江町)
イベントや防災事業で震災後のコミュニティーづくり
関東・甲信越

明日のみずき野を考える会
(茨城県守谷市)
地域サロンで健康や趣味の集い、高齢者の交流の場に

田村律之助顕彰会
(栃木県栃木市)
栃木を有数の産地にした「ビール麦の父」の功績を発信

球都桐生プロジェクト推進協議会
(群馬県桐生市)
元プロ野球選手を招いて教室やイベント。青少年育成も

下田の杜里山フォーラム
(千葉県柏市)
里山を保全、小学生の学びや海外の人材育成に活用

青戸商店会連合会・まちあそび人生ゲームIN葛飾
(東京都葛飾区)
商店街を巡るリアル「人生ゲーム」が人気イベントに

みんなの居場所「marugo-to(まるごーと)」
(新潟市)
ビニールハウスが交流の場、誰でも参加、自由に過ごす

Happy Spaceゆうゆうゆう
(山梨県笛吹市)
孤立しがちな子育て中の親、地域で支える仕組みつくる

日本ジビエ振興協会
(長野県茅野市)
ジビエ利用拡大へ、食品開発や衛生管理向上に尽力
東海・北陸

富山県立氷見高校海洋科学科
(富山県氷見市)
高校生が藻場を荒らすウニを駆除・養殖し、商品化へ

町野復興プロジェクト実行委員会
(石川県輪島市)
災害FM開局や高齢者支援、復興とその先の街づくりへ

ふくいSchool of Liberal Arts
(福井市)
専門家らが高校生向けに人文・社会科学講座。視座育む

コミュニティサポートスクエア
(岐阜市)
若者に社会参加の機会づくり、子どもに食料・学習支援

龍津寺・土曜子ども寺子屋
(静岡市)
学習支援が発展、多世代交流通じて子どもの孤立防止

木曽川文化創造ワークショップ
(愛知県一宮市)
地域住民公募の手作り演劇や演奏会を開催、文化を創造
近畿

イカハッチンプロダクション
(滋賀県長浜市)
女性移住者が雑誌発刊、地域の魅力以外に本音も発信

天引区の活性化と未来を考える会
(京都府南丹市)
自由な議論で誰もが楽しく活動。にぎわう毎月の野菜市

HAAYMM(ハイム)
(神戸市)
神戸で創作活動を。アーティストに滞在、交流の場提供

古代大和史研究会
(奈良市)
毎月、古代史講座を開催、アマチュア研究者の輪広がる
中国・四国

高城牛追掛節保存会
(鳥取県倉吉市)
大坂城築城にちなむ民俗芸能を継承、万博にも出演

益田日本語ボランティアグループ・ともがき
(島根県益田市)
地域の外国人に日本語教室、多文化共生の交流事業も

吉縁起村協議会
(岡山県真庭市)
めでたい地名で地元PR、特産品開発や無人店舗開設

岩国行波の神舞保存会
(山口県岩国市)
200年以上続く重要無形民俗文化財の神楽を集落挙げて継承

家賀再生プロジェクト
(徳島県つるぎ町)
耕作放棄地で藍の栽培復活、教育旅行で交流人口増

たどつ本町筋を愛する会
(香川県多度津町)
イベント通して歴史的建造物の街並みににぎわい創出

大三島みんなのワイナリー
(愛媛県今治市)
耕作放棄地をブドウ畑に、移住者ら巻き込みワイン製造

チームシルク
(高知県梼原町)
70代女性グループが高齢者見守り、特産品の開発も
九州・沖縄

筑前若者会(わっかもんかい)
(福岡県筑前町)
秋に巨大なわらのかかし作り。食と農の郷土盛り上げる

あらいぐま人吉
(熊本市)
災害で汚れた写真を洗浄・再生、心の復興にも取り組む

豊の国宇佐市塾
(大分県宇佐市)
戦争遺構残る街、歴史を掘り起こし子どもたちに引き継ぐ

東米良地区1000年協議会
(宮崎県西都市)
高齢化・人口減対策にデジタル技術、山村の暮らし守る

楽友協会おきなわ
(那覇市)
演奏や自己表現の楽しさ通じ、子どもの体験の格差解消

漫画喫茶・さんすうカフェ
(沖縄県北中城村)
漫画喫茶を子どもの居場所に活用。幅広い世代で支える
